toarudaigakuseizakkiの日記

自分の文章をネットの海に残すことを目的にしています。

『燃火の教え』(創作小説)

紀元前5世紀から7世紀ごろ、詳しい年月は明らかになっていないがブッダという人物がいた。本名をゴータマ・シッダルタと言い、彼は現在におけるインド周辺を回り、教えを説くという生活していた。そんな彼にはこんなエピソードが伝わっている。

いつものようにブッダが教えを説いてインドを回っている中、ブッダとその弟子達の一行はふとお腹が空いたので、「象頭山ラーメン」というラーメン屋に立ち寄ることにした。
そこはバラモン教のカッサパ三兄弟とその弟子達が営む、強火で煮込んだスープが評判のラーメン店であった。

石造りの店に入ると、ブッダ一行はカウンター席に座り、厨房にいるカッサパ三兄弟にラーメンを注文した。カッサパ三兄弟は異教徒であるブッダ達に眉を顰めながらしぶしぶ調理を始めた。

待ち時間が退屈だったので、強火でスープを煮込む寸胴鍋を指差してブッダは弟子に問いかけた。
「この火を一瞬で消すにはどうすれば良いか?」

弟子は答えた。
「水をかけます。」

弟子は答えた。
「土で埋めます。」

カッサパ三兄弟は言った。
「やめてください。」

ブッダは答えた。
「ただ目を閉じれば良いのだ。そうすれば、私達の前から火は消える。熱を感じるのであれば、心を閉じなさい。そうすれば、完全に炎は消える。」

「私達の心はすべてが燃えている。私達の心だけではない、世の中の全てが燃えている。怒りや悲しみの炎はここから生まれる。この火が私達を苦しめるのだ。この火はやがて世界を焼き尽くしてしまうだろう。」

弟子達はブッダに問うた。
「では私達はどうすれば火を消せるのでしょうか。」

ブッダは答えた。
「この世界を大きな川の流れと捉え、自分も川に吸い込まれた1つの水滴であると考えなさい。そして自我を消し、欲を出さずに自然と調和しながら生きなさい。そうすれば火は消え、悩みも共に消え去るだろう。」

調理をしながらブッダの説法を聴いていたカッサパ三兄弟はとても感動し、こう言った。
「素晴らしい真理だ。ぜひ私達も弟子にしていただきたい。」

ブッダはそれを快諾した。

そんなことをしているうちにラーメンが完成し、カッサパ三兄弟はそれぞれラーメンをカウンター越しに丁寧に、最大限の敬意を込めて提供した。ブッダと弟子達はみんなで美味しくラーメンを食べた。

この時ブッダ達が食べたラーメンが何ラーメンであったかは諸説あるが、現在に伝わる仏教やヒンドゥー教では基本的に肉食は禁じられているため、この時ブッダ達が食したラーメンには肉は使われていなかったと言うのが定説ではあるものの、詳しいことはよくわかっていない。

(この文章はブッダの伝説を元にした筆者による創作です。)